研究概要 |
平成17年度は前年度までの成果を発展させ,以下の結果を得た. 1.誤り訂正符号を用いたMIMO-OFDMの評価実験 前年度までに構築した2×2MIMO評価システムにより,符号化率1/2,拘束長3の畳み込み符号を用いたMIMO-OFDM空間分割多重システムのビット誤り率とフレーム誤り率をレイリーフェージング環境化で試験を行った.その結果,計算機シミュレーション結果に比較すると,数dBの劣化はあるものの,ほぼ期待される特性が確認された.これにより,本研究の目標の一つであるチャネル推定まで含めたMIMO-OFDMの実験的検証がなされたといえる. 2.MIMO屋内伝搬特性の評価 MIMOシステムの特性は伝搬環境や送受信アンテナ配列に依存する.送受信間に見通しがある場合・ない場合のそれぞれについて屋内伝搬実験を行い,フェージングの空間相関やアンテナ間の相互結合が固有ビーム空間分割多重(E-SDM)システムの平均ビット誤り率に与える影響を評価した.その結果,一般に見通しがある伝搬路は見通しがない伝搬路に比べ,E-SDMの特性ははるかに良好になるが,送受信アンテナの配列の影響を大きく受けることが明らかになった. 3.E-SDMにおけるチャネル情報のフィードバック量削減 周波数分割復信(FDD)においてE-SDMを実現するためには,チャネル情報を受信側から送信側にフィードバックする必要がある.この場合,OFDMの各サブキャリア全てのチャネルについてフィードバックを行うと,その量が過大となり,通信回線の容量を圧迫する.一方,多重伝搬波の遅延量はガードインターバル内に収まっていることから,送信側に,時間領域で最小自乗法を用いて得られたインパルス応答(時間領域チャネル情報)をフィードバックすることにより,その量を著しく削減可能である.インパルス応答の主要成分のみをフィードバックすることによって更にその量を削減できる.計算機シミュレーションと,2で述べた屋内伝搬データによる検証により,本削減方法の有効性を示した.
|