研究課題
本研究は、弾性波素子と半導体回路を一体化することによって実現される機能モジュールの可能性について多面的に検討することを目的としている。まず、弾性波素子特性が電力増幅器(PA)の性能へ及ぼす影響について検討した。そして、そのインピーダンスZ特性がPA大出力時の電力負荷効率(PAE)に大きく影響し、Zの変動を抑圧することが重要であることを明らかにした。また、PA大出力時には非線形性が強いため、高調波成分に対するZも非常に重要であることを示した。現在、これらの成果を基に、PAの最適設計を進めると共に、試作PAの特性評価システムを構築している。また、実効的に弾性波素子のZ変動が無い様に見せかける手法を提案した。2個の弾性波素子と2個の90°ハイブリッドを組み合わせたもので、理論と共に実験的にもその有効性を確認した。次に、モジュール応用に最適として前年度に提案した、銅電極/15°YX-LiNbO_3基板構造弾性表面波(SAW)デバイスの特性改善について検討した。まず、通過域上端に観測された損失の増加は、基板内部へのバルク波放射によるものであることが判り、銅膜厚の増加によりその影響を通過帯域外へずらすことができることを示した。また、通過帯域内に多数見られた横共振に基づく不要応答についても、主応答に影響を与えず、不要応答のみを効果的に抑圧する手法を見出した。.即ち、SAWを励振するすだれ状電極部と外部との結線を行うバスバー部との間にダミー電極を設け、それに適切な重み付けを与えることにより、不要応答のみをダミー電極部に引き出し、散乱する。さらに、弾性波素子と低雑音増幅器部に組み込んだ、可変フィルタを提案すると共に、個別半導体素子と弾性波素子組み合わせたデモンストレータを試作している。
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Japanese Journal of Applied Physics Vol.44,6(印刷中)
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