研究概要 |
本研究は情報機器のクロック周波数を高周波化し、温度特性の優れた共振器を探索するため、ラム波理論を用いた超高周波共振器について検討を行った。その結果、次の4点を明らかにした。 1.ラム波型高周波共振器の解析と実験:運動方程式と圧電基本式とを境界条件の下で数値解析し,ラム波の位相速度と反射係数を求めた。その結果に基づき一端子型ラム波共振器を設計・試作を行った。励受信電極の対数157.5、反射器本数170本の共振器を設計した。この形状は同一仕様の弾性表面波共振器より反射器の本数が少なく、小型化が確認できた。 2.500MHz帯の発振器作成:ラム波型高周波共振器をコルピッツ回路に組み込み発振に成功した。発振周波数511MHzで短期安定度は±0.03ppmである。この発振周波数は同一形状の水晶振動子の動作周波数の約4倍、弾性表面波共振器動作周波数の約2倍の高周波である。 3.温度特性の計算と最適カットの探索:ラム波の周波数温度依存性を解析した。オイラー角を任意に変化させ、温度依存性を計算したところ、1次TCF=0を示す数十のカットを見つけることができた。その中で、2次特性を示す良好なカットの一例を上げる。デバイス使用温度範囲(-40℃〜100℃)において周波数偏差が、30ppm,80ppm,100ppm,200ppm以下のカットを見出した。また、3次特性を示す良好なカットを数カット見つけることができた。デバイス使用温度範囲(-40℃〜100℃)において周波数偏差が、僅か4ppm,10ppm,12ppm,20ppm以下の非常に良好な温度特性を示すカットを見出した。 4.ATカット水晶基板を用いた温度特性解析結果の実験的確認:温度特性の計算結果の確認のため、ATカット水晶基板を用いて実験を行った。X軸方向とY軸方向伝搬ラム波の温度特性について理論的実験的検討を行った結果、両者の非常に良い一致を見た。
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