研究概要 |
本研究は情報機器のクロック周波数を高周波化し、温度特性の優れたラム波型共振器を探索するため、ラム波理論を用いて理論および実験的に検討を行った。その結果、次の3点を明らかにした。 1.ラム波型基板の波動解析を行い,任意カットの水晶基板を伝搬するラム波の位相速度、電気機械結合係数および周波数温度特性について理論および実験的検討を行った。水晶基板の弾性定数、圧電定数および誘電率の3次までの温度係数を考慮した数値解析を行った。その結果、高周波動作が可能であり、またラム波励振用電気機械結合係数も十分大きいことが分かり、ラム波を用いた新しい弾性波素子用基板として十分に応用可能であることを示した。 2.温度特性の計算と最適カットの探索:ラム波の周波数温度依存性を解析した。三つのオイラー角を0.5°間隔で任意に変化させ最適カットの探索を行った。1次温度係数が零を示す数十のカットを見つけることができた。その中で、2次特性を示す良好なカットの一例を上げる。オイラー角(0°,26.0°,2.1°)において、デバイス使用温度範囲(-40℃〜100℃)において周波数偏差が30pp以下のカットを見出した。このカットは電気機械結合係数が0.484%と非常に大きくラム波基板として有望である。 3.3次関数特性を示す良好なカットを理論と実験によって見つけることができた。AT-カット基板の位相速度が25,436.0m/sのモードは動作周波数が高く、また裏面を短絡させることによって電気機械結合係数が大きくなった。周波数変化150ppm以下の三次特性を示すことを実験で確認し、また第二オイラー角を0.2°変化することで周波数変化を30ppm以下に抑えることが出来ることも示した。
|