研究概要 |
本研究は情報機器のクロック周波数を高周波化し、温度特性の優れたラム波形共振器を探索するため、ラム波理論を用いて理論および実験的に検討を行った。その結果、次のことを明らかにした。 1.ラム波型基板の波動解析を行い、任意カットの水晶基盤を伝搬するラム波の位相速度、電気機械結合係数および周波数温度特性について理論および実験的検討を行った。水晶基板の弾性定数、圧電定数および誘電率の3次までの温度係数を考慮した数値解析を行った。その結果、高周波動作が可能であり、またラム波励振用電気機械結合係数も十分大きいことが分かった。 2.500MHz帯の発振器作成:ラム波型高周波共振器をコルピッツ回路に組み込み発振に成功した。発振周波数511MHzで短期安定度は±0.03ppmである。この発振周波数は同一警乗の水晶振動子の動作周波数の約4倍、弾性表面波共振器動作周波数の約2倍の高周波である。 3.ATカット水晶基板を用いて温度特性解析結果の実験的確認:温度特性の計算結果の確認のため、ATカット水晶基板を用いて実験を行った。X軸方向とY軸方向伝搬ラム波の温度特性について理論的実験的検討を行った結果、両者の非常に良い一致を見た。 4温度特性の計算と最適カットの探索:ラム波の周波数温度依存性を解析した。三つのオイラー角を0.5°間隔で任意に変化させ最適カットの探索を行った。その結果、デバイス使用温度範囲(-20℃〜80℃)において周波数偏差がそれぞれ、0.7ppm、1.4ppm、1.24ppmと非常に優れた新カットを見出した。これらのカットはいずれも電気機械結合係数が大きくラム波基板として有望である。基礎実験によって、温度係数が優れていることを確認している。 励振電極面の裏面に薄膜(SiO2,Au, Ta2O5)を設けた場合のラム波伝搬特性について検討を行い,弾性波速度の遅い薄膜を設けると電気機械結合係数が増大すること,速度分散性により周波数微調整が容易に行えることを明らかにした。実験により金薄膜を設けた場合について検討を行い、膜厚0.03μm(波長10μm)の金薄膜を設けると電気機械結合係数が計算値より10倍増大することを示した。
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