研究概要 |
カオスの情報通信システムヘの応用の重要性が認識されたのは最近のことである。コイン投げの数学的モデルであるi.i.d.(independent and identically distributed)2値系列の生成法としては、従来の区分線形関数や三角関数で規定される多項式型1次元力学系以外に,Jacobi楕円関数有理型1次元力学系が自然に導入される。研究代表者は,さらにJacobi楕円関数の微分を新たな変数y_nとして導入することにより,有理関数型2次元力学系を提案した.本年度の成果は以下の3点に纏められる. (1)2次元の実数値系列をビット展開して得られる2値系列がi.i.d.となることの数学的証明を与えている.このことは,第一に,長いブロック長を持つAES等ブロック暗号強度評価に際し,大量な英文の取得が困難な現状を鑑みると,乱数平文系列が容易に生成できることを意味する.第二に,現在多用されているWeierstrass型楕円暗号のアルゴリズム実装法との密接な関連研究の必要性を示唆する. (2)カオスを利用した実数値型ElGamal公開鍵暗号系の脆弱性を明らかにした.このことは,冪演算の可換性を利用したElGamal型の暗号系に実数値の多項式を安易に適用できないことを意味する. (3)スペクトル拡散に基づく電子透かしシステムにおいて透かし情報の耐性を評価した.また,従来提案した方法と別のより簡便な電子透かし法も併せて提案した.
|