研究概要 |
情報セキュリティに関する社会的関心が非常に高まっている今日,暗号技術とは異なる情報セキュリティ技術として情報秘匿技術が関心を集めている.情報秘匿技術は,画像,ビデオ,音楽データ等のメディアデータ中に,第三者に知られたくない重要な情報を隠す技術であり,ステガノグラフィ技術と電子透かし技術に二分される.ステガノグラフィ技術では,メディアデータは秘密情報を埋め込むための容器(ダミーデータ)として用いられ,ダミーデータ中に大量の秘密情報が隠されていても,そのことを第三者に気付かれないことが必要である.本研究では,今後の普及が期待されるJPEG2000規格による圧縮データ(静止画像,ビデオ)を用いるステガノグラフィを実現し,インターネットを介した大容量秘匿通信を可能にする. 昨年度までに,JPEG2000規格の静止画像を用いるBPCS(bit-plane complexity segmentation)ステガノグラフィ(JPEG2000-BPCSステガノグラフィ),及びMotion-JPEG2000ビデオを用いるMotion-JPEG2000-BPCSステガノグラフィを実現した.本年度は,それらのステガノグラフィに対する埋め込み検出を目的とするステガナリシスに関する研究を行った.JPEG2000-BPCSやMotion-JPEG2000-BPCSでは,ウェーブレット変換画像の低次のビットプレーンに情報を埋め込んでいる.埋め込みによって生じるウェーブレット係数の頻度分布(ヒストグラム)の変化を調べた結果,埋め込みデータの0と1の確率が等しい場合,隣接するウェーブレット係数の頻度が均等化する傾向があることを確認した.このようなヒストグラム変化を捉えるカイ二乗検定によって,大量の埋め込みを行った場合に埋め込み検出の可能性があることを確認した.そのようなヒストグラム攻撃に耐性を持たせるため,埋め込み前後でウェーブレット係数のヒストグラムが変化しないJPEG2000ステガノグラフィを開発した.
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