極微小多電極スマートチップによる網膜外網状層の時空間処理機構の解析

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15360218
• 研究機関: 独立行政法人理化学研究所
• 研究代表者: 臼井 支朗 独立行政法人理化学研究所, ニューロインフォマティクス技術開発チーム, チームリーダー (40023337)
• 研究分担者: 青山 俊弘 独立行政法人理化学研究所, ニューロインフォマティクス技術開発チーム, 研究員 ; 中内 茂樹 豊橋技術科学大学, 工学部, 助教授 (00252320) ; 石田 誠 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (30126924)
• キーワード: 網膜 / マルチチャネル記録 / 網膜電位図(ERG) / 光応答計測 / マイクロプローブ / 数理モデル

研究概要

本研究では、網膜の受容野形成機能解明を目指し、集積型極微小マルチ電極による網膜神経細胞微小電位の計測実験系の確立と、記録した応答の解析および神経電位計測に対してより適した電極の開発を行った。
これまでに確立したVLS結晶成長法を用いて、実際に集積回路上にミクロンサイズのSiプローブを設計し、試作した。これら試作した電極を用いる網膜光応答計測実験系を構築し、コイ単離網膜の光応答計測実験を行った。その結果、試作電極は、フラッシュ光や単色光刺激に対する網膜離図(ERG)を計測できることが示された。これは、開発した試作電極が、光に対する網膜の極微小な電位応答や、網膜に特徴的な緩やかに変化する電位変化をも検出可能であることを示している。また、実験からこの電極が局所部位の電位応答を計測し得ることを示した。以上の結果は、開発した電極が、局所ERG計測への新たな計測ツールとして期待できることを示唆している。
また一方で、網膜光応答計測に適した電極の開発をさらに進めるために、電気生理実験より得られた知見をもとに電気的および形状的仕様を決定したセルチチャネル電極の製作手法について研究を進めた。すなわち、数ミクロン間隔で電極プローブを作成するための集積化や、網膜各層からの電位記録へ向けてSiプローブの長さを制御する技術の確立を目指した。これより、Si(111)基板上にMOSFETを作成し、その上にSiプローブを成長させる技術を開発した。このMOSFET一体型マルチ電極チップの生理食塩水内における電気的諸特性は、神経電位計測に対してほぼ十分な特性を示した。さらに、電極先端材料としてプラチナやイリジウムを用いることでSiプローブのイシピーダンスが低減できることも示した。こうした特徴の電極を安定して製作する技術を確立することで網膜光応答計測におけるさらなる展開が期待できる。

研究成果

• [文献書誌] 河北知克, 石原彰人, 臼井支朗, 立花政夫: "網膜双極細胞シナプス終末における伝達物質放出機構の数理モデル"第7回視覚科学フォーラム予稿集. 14 (2003)
• [文献書誌] Nakauchi S, Ishihara A, Usui S: "Fundamental research on visual information processing"Proceedings of the Second Symposium of Intelligent Human Sensing. 47-50 (2004)
• [文献書誌] 針本哲弘, 石原彰人, 河野剛士, 石田誠, 臼井支朗: "ヤイクロプローブ電極アレイによる網膜光応答計測"電子情報通信学会技術研究報告. 103・732. 59-64 (2004)
• [文献書誌] Kawano T, Takao H, Sawada K, Ishida M: "Multichannel 5×5-site 3-dimensional Si micro-probe electrode array for neural activity recording"Journal of Applied Physics. 42. 2473-2477 (2003)
• [文献書誌] Kawano T, Kato Y, Tani R, Ishino H, Takao H, Sawada K, Ishida M: "Neuron size Si probe array fabricated on integrated circuits for multichannel electrode"Proceedings of The 12th International Conference of Solid-State Sensors and Actuators (Transducers'03). 2. 1679-1682 (2003)