昨年度は、微小なクーロン摩擦が高コンプライアンスな系に存在する場合、それが臨界点近傍の挙動に大きく影響を及ぼすことを単純支持梁の座屈に関して指摘し、その妥当性を実験で観察した。本年度はさらに、クーロン摩擦による曲げモーメントが両端支持点で発生しない両端固定梁について実験を行い、昨年度の実験結果との比較から、微小なクーロン摩擦が分岐点近傍でのダイナミクスに大きく影響を与えることを実験的に確認した。微小重力下で劣駆動マニピュレータのフリーリンクは、高コンプライアンスなシステムとみなすことができるが、本年度はこのようなシステムの実験機を試作した。また、マニピュレータの運動方程式を構築し(連立2階非線形常上微分方程式)、それを多重時間を導入して、摂動法によって解析的に解き、自律系の平均化方程式を導いた。この結果、マニピュレータの関節に摩擦潤滑ベアリングが使われた場合のマニピュレータは、その高コンプライアンス性をもちいることにより、様々な角度での位置決めが可能なことを指摘した。すなわち、高コンプライアンス性に起因して、安定な平衡点が連続的に存在するようになるため、過渡状態を適切に設定することにより、フィードバック制御なしに目標位置へ位置決めが可能であることを指摘した。過渡状態の適切な制御は、アクティブリンク(アクチュエータが接続されたリンク)によって行う必要があり、この制御は次年度の課題である。
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