研究概要 |
高コンプライアンスな機械システムの最も基本的な例として,座屈近傍状態での梁をとりあげ動的解析を行った.その結果,座屈後挙動においてクーロン摩擦の影響により不安定な平衡点近傍に安定な領域が存在することを理論的ならびに実験的に明らかにした.さらに座屈点近傍(高コンプライアンス下)での梁の安定化法を提案した.すなわち,軸方向加振により不安定で自明な平衡状態を安定化出来ることを理論的ならびに実験的に明らかにした.またこのような高周波加振によって,クーロン摩擦の影響で発生する無数の非自明な安定平衡状態は不安定化し,自明な平衡状態へ安定化が可能であることを理論的ならびに実験によって指摘した.また以上のような特徴的なダイナミクスを支配するクーロン摩擦の同定法を導いた。すなわち一般に微小なクーロン摩擦を実験で得られた自由振動波形から同定する方法を提案し,両端単純支持梁の支持点に作用する微小なクーロン摩擦の大きさを計測した. 次に,劣駆動マニピュレータを取り上げた。このシステムはアクチュエータのない関節が存在するため,高コンプライアンスなシステムである.劣駆動リンクが剛体の場合と弾性体の場合について,運動方程式を定式化し,特異摂動法を用いて理論解析を行った.その結果,劣駆動リンクには様々な分岐現象が発生するとともに,様々な位置に安定な平衡点を作り出せることが明らかになった.さらに,コンプライアンスの高さから対象物に対する衝撃が十分低く抑えられる点が特徴である,ロボットハンドを理論的に提案した.高周波でハンドの支持部を加振するとその振幅と振動数に応じてハンドの位置が変化し,対象物の把持が出来る構造で,ロボットのみならず様々な把持作業をともなう機械システムに広く応用が可能である.
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