研究概要 |
目標としたところは,1)音響処理ことにコンパクトディスク等のフォーマットから20kHz以上の可聴帯域以上の高域を再生する超高域処理DAコンバータの設計,開発,ことにこれまでPCの外付けボードで実現していたものの,独立型への展開,さらに2)サンプル値制御理論に基づく信号圧縮,また圧縮されたソースからの高精度復元,さらに3)画像処理等への応用,である. 1)についてはCDのサンプリング処理の8倍のオーバーサンプリングを実現し,これに対して完全帯域制限仮定を設けない条件の下で,アナログ特性によるナイキスト周波数以上の帯域延長特性を仮定した上でサンプル値H∞(準)最適フィルタを設計した.これまではPC上での実現であったが,昨年度からの設計に基づき実機を作成し,実装に成功した.得られた成果は少なくとも聴感上は従来のCDの音質を圧倒的に上回り,また多くのリスナーから同様の評価を得た. 2)に対しては,MDなどにおける圧縮されたソースに対し,2倍アップサンプルしたものから適切な倍音成分を取りだす試みを実行し,聴感上著しい改善が得られることを確認した.この成果はMDなどの実機に搭載され,すでに商用化がなっている.将来的には多くの圧縮オーディオの標準装備となることが期待されている. 3)については,モスキートノイズやブロックノイズなど,ディジタル画像とくに動画において特徴的なノイズに対して,その低減化を試みた.このうちモスキートノイズに対しては,本研究のフィルタ設計がとりわけ有効であることが確認されている.さらに,動画においてことに問題となるブロックノイズに対しては,やはり本研究のフィルタ処理を施すことが有効であるが,この際大きな問題となるのが,これらのフィルタは原画増でのシャープなエッジも鈍化させてしまうことである.これについてはある種の非線形処理が有効であることは前年度の研究で確認されていたが,今年度はその処理を一歩進め,それを実時間化することに目処をつけた.これにより本研究の一層の実用化が進むことが期待される. これらは従来完全帯域制限の仮定の下で処理されていたものであるが,本研究によってサンプル値制御理論を用いることにより,従来の制限を超えた高周波まで最適処理が可能となったものである.
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