研究概要 |
本研究は、廃棄物溶融スラグ利用コンクリートの性能評価とその水域環境修復への適用に関する検討を行ったものである。溶融スラグのコンクリートへの適用に関しては、スラグの改質としての磨砕の効果と鉄筋コンクリートとしての曲げせん断挙動についての補足実験と総括を行った。前者については、スラグの種類および溶融方式に関係なく磨砕加工による溶融スラグの形状改善がコンクリートの単位水量を著しく低減させること、磨砕加工を施していない溶融スラグの利用はコンクリートの強度を低減させるが、磨砕加工により改善されることが分かった。後者については、細骨材の一部に溶融スラグを用いた鉄筋コンクリート梁の曲げ及びせん断挙動について検討したものであるが、溶融スラグを用いた鉄筋コンクリート梁の曲げせん断耐荷挙動は一般的な方法で評価できること、鉄筋コンクリート梁の曲げひび割れ幅は、土木学会コンクリート標準示方書の曲げひび割れ幅算定式を用いることにより安全側に評価されることなどが分かった。また、溶融スラグを用いた鉄筋コンクリート梁における鉄筋の付着応力-すべり関係に及ぼすスラグの有無について検討し、鉄筋の平均付着応力はコンクリートの圧縮強度及びブリーディングの影響を受けるが、鉄筋の付着応力-すべり関係に及ぼすスラグの有無の影響は小さいことが分かった。水域環境修復に関しては、養殖漁業が盛んで人工餌料投入による底質環境悪化が深刻な半閉鎖性海域の海底に,溶融スラグを敷き詰めた場所(約2m^2)と対象区において,約12ヶ月に渡り底質改善効果を検証した.底質のCOD,硫化物濃度を指標として分析し,秋季の人工餌料投入時期は両地点でCOD,硫化物濃度ともに上昇するが,スラグを敷き詰めた場所の年間を通じたCOD,硫化物濃度は,対象区よりも10〜20%程度低い値となっており,スラグ投入による有機物の分解に伴う底質改善効果が検証された.
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