研究概要 |
本研究は,超音波非破壊検査技術の信頼性と精度の向上を目的として,非均質異方弾性体における波動の基本的な特性を解析的に明らかにした上で,高精度でかつ簡便な方法によって材料定数(速度および減衰定数)を求めるものである.本年度は3年計画の初年度として,1.非均質異方性材料における超音波特性の解析的研究,ならびに,2.超音波予備実験を行った.得られた主な結果は以下の通りである. 1.非均質異方性材料における超音波特性の解析的研究 (1)実体波の伝播特性の解明:鋼材の異方性を明らかにするために,水浸法によって様々な入射方向から実体波を鋼板に対して入射したときの鋼材中の伝播特性を明らかにした.簡易な波線理論を用いた解析により,直交異方性の鋼材の弾性定数を決定した.また,コンクリート材料に対して超音波計測を実施し,速度および減衰係数を求めた.その際,超音波探触子の電気-音響変換損失,伝播距離に比例する超音波の放射による見かけの損失を考慮し,解析精度の向上を図った. (2)表面波の分散特性の解明:不完全な接着条件を持った層状構造の弾性体表面を伝播する表面波の分散を数値解析によって明らかにした.高周波ならびに低周波における極限をとることにより解析解に漸近することから精度の確認を行った. (3)超音波の散乱特性の解明:結晶粒による散乱減衰の評価のための基礎解析として,散乱体が多数存在する多重散乱問題を多重散乱近似と高速多重極境界要素法によって数値計算によって解いた.低周波域において両者の解析結果はよく一致することが確認された. 2.超音波予備実験 探触子の帯域に合ったガウシアン正弦波を用いた相互相関法によって,実体波の音速を0.5%以下の誤差で測定することができた.次年度以降においては表面波の音速にも適用する予定である.
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