研究概要 |
平成16年度において得られた主な結果は以下の通りである. 1.非均質異方性材料に対する超音波計測 不均質異方性材料に超音波法を適用する場合,超音波探触子の性能や材料特性などの基本特性を十分に考慮しなければ,しばしば受信波形のS/N比が低く,検査精度が悪くなる.そこで本研究では,超音波探触子の性能を活かした最適な送信波としてマッチドパルスを提案した.不均質な材料としてコンクリート供試体を用い,実験によってマッチドパルスが既存の送信波に比べて高いS/N比と分解能を有していることを確認した. 2.非均質異方性の材料特性の推定アルゴリズムの開発 圧延鋼板のような直交異方性材料は9個の独立な弾性定数を持つ.ここでは,接触法によって3つの定数を決定し,理論と計測による位相速度曲線の差が最小となるように非線形最小2乗法を用いて残りの6つの弾性定数を決定した.得られた弾性定数は既往の文献で得られている弾性定数と比較してほぼ妥当な値であった. 3.計測と解析の比較検討 多重散乱近似理論ならびに高速多重極境界要素法を用いて多数の介在物による多重散乱解析を行い,波動の透過あるいは反射特牲を明らかにした.その結果,介在物が規則的に並んでいる場合には,ある特定の周波数において波動の透過率が極端に低下するバンドギャップと呼ばれる現象が確認された。一方,介在物がランダムに配置された場合にはバンドギャップは見られず,高周波数になるほど透過率が減少し,多重散乱による減衰特性を評価することができた.これらの現象は,水浸法を用いた実験によって比較検証された.
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