研究概要 |
18年度の研究は主にレーザ超音波非破壊評価法に関する実験的な検討と、本研究の最終目的である多重極法を用いた非破壊評価に関する逆問題の解析を中心として行われた。まず、レーザ超音波非破壊評価法に関する研究として,レーザによって超音波を励起し、レーザ速度計測によって、超音波計測を行うタイプの非破壊評価実験をおこなった。最初に、レーザによって励起される超音波波形決定逆問題を定式化し,実データを用いた逆解析を実施した。レーザによる熱源は、時間方向にdelta関数、空間方向にガウス分布をするものと仮定し、逆解析をわずか2パラメータを推定する簡単な逆問題に帰着させた。熱動弾性理論による波形解析とコスト最小型逆問題を組み合わせて解析を行ったところ,非常に高い精度で,実験波形をシミュレートできることがわかった。次に,こうして得られた入射波形を用い,通常の境界積分方程式を順問題ソルバとして、簡単な表面クラックを決定する逆問題を解いた。入力データとしては,室内実験で得られた実データを用いた。得られた結果は十分正解に近いものあった。次に,理論的な研究としては、上記の逆問題と同じ問題において準問題ソルバとして高速多重極法を用いた解析を行った。問題規模は空間方向に5万元規模である。解析の結果精度よく,未知の亀裂の形状パラメータを推定することができた。ただ,逆問題として解ける程度の問題のサイズでは多重極法を用いる事の効果は期待したほどには大きくなく、従来法に比較して多重極法の絶対的な優位性を確認するにはいたらなかった。この他,異方性の波動問題への多重極法の拡張や,モーメント数の4から3への減少などと言った理論的な点について、簡単な数値計算によって検証を行った。
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