研究概要 |
構造基本断面のガスト空気力のスパン方向相関が接近流に比べて増加するメカニズムには,断面固有の剥離せん断層の接近流の変動に伴う非定常な動きが重要な役割を演ずることが明らかとなっている.本年度は剥離せん断層と接近流とを関係づける空力アドミッタンスに着目し,フラッターを支配する自励空気力(非定常空気力)特性との関連から,ねじれフラッターを生じる断面辺長比1:5の矩形断面を用い,まず,(1)ピッチングモーメントに関する空力アドミッタンスの関数形状(周波数伝達特性)を風洞実験により決定した.その結果,換算振動数k=1.26(k=bω/U,b:断面半幅員,ω:鉛直変動風速の円振動数,U:平均風速)付近で準定常値を大きく越えるピークを示すことが明らかとなり,ねじれフラッターを生じる断面に典型的な空力アドミッタンス形状が得られた.次いで(2)断面側面の非定常圧力計測を行い,一様流中で振動する同じ断面で計測される非定常空気力との対応を確認し,ねじれフラッターを特徴づける圧力分布と,鉛直変動風速によるガスト空気力による非定常圧力分布はほぼ同じであることが明らかとなった.ただし,空力アドミッタンスのピーク値(k=1.26)に対応する無次元風速はねじれフラッターを生じるほど十分な高風速ではなく,空力アドミッタンスのピークとねじれフラッターは直接対応はしないものと判断された.さらに(3)3次元変動気流発生装置を用い,空力アドミッタンスのピーク値に相当する換算振動数(k=1.26)におけるスパン方向の圧力分布の相関度が,それ以外の換算振動数におけるものに比べて顕著な差が見られるか否かを観察したが,本研究で計測を行った範囲では明確な差異は見られなかった. 一方,振動中の断面に鉛直変動風速が作用する場合の空気力は,自励型とガスト空気力(強制型)の両空気力を重ね合わせて表現されるが,(4)その可否を調べるため,模型を鉛直たわみモードで加振させた状態で非定常圧力を計測し,運動しない固定された模型に鉛直変動気流が作用する場合と比較した.その結果,模型加振振動数成分と鉛直変動気流の振動数成分は互いに干渉することなく,それぞれ独自の圧力分布を示した.このことより,自励空気力と強制空気力の重ね合わせは十分成り立つことが明らかとなった.
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