研究概要 |
本年度は,共産主義武装ゲリラ(マオイスト)のテロ活動に伴うネパールの政情不安から,ネパールでの調査研究はその影響の小さな高山エリアのみとし,氷河湖決壊洪水(GLOF)の実体解明を目的とした下流域の調査を隣国ブータンで行った.1)ヒマラヤ地域に多く分布する氷河湖のうち,行程が安易なImja Tsho氷河湖を対象に,調査方法基準を作成することにした.また,既に決壊したDig Tsho氷河湖も,行程が許す範囲で調査対象とすることにした.2)Imja Tsho氷河湖では,モレーンダムの測量を行うと共に,内部構造把握のために,弾性波探査を行った.その結果,エンドモレーン部に,エンドモレーン丘の大部分を占めるような,大きな氷河の溶け残りが認められた.3)Imja Tsho氷河湖からモレーン試料を採取して物理・力学試験を実施した.得られた内部摩擦角は35度程度で,モレーンダムののり面勾配とほぼ同じであった.4)GLOFの実体を把握するためにブータン中部プナカ周辺で、1994年GLOFで生じたポチュ川沿いの段丘および現河床堆積物の粒度・円磨度分析を行った.その結果、過去(歴史時代以前)に1994年のものよりはるかに大規模なGLOFが発生したことが推定された。5)今年度の調査結果に基づき,エンドモレーン内の溶け残り氷塊の融解予測が不可欠,と考え,融解シミュレーションのためのパラメータを観測することを目的に,モレーンダム内に温度計を設置した.
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