研究概要 |
平成15年度には,茨城県波崎町の港湾空港技術研究所の観測桟橋にてレーダー観測を定期的に実施し,また,新潟県の新潟港西海岸にて一ヶ月にわたる冬季の高波浪観測を実施した: ・波崎におけるルーチン観測 大潮時に,満潮から干潮にかけての観測を実施し,各時間帯における平均画像を求めることにより,汀線の位置を推定した.これと別途に観測した潮位データを組み合わせることにより,前浜の地形を推定した.おおよそ1年間にわたるデータの蓄積からは,波浪が低エネルギーの時に海岸形状の非一様性が高まり,高波浪時にそれが一様化されるというプロセスの循環を明らかにした. ・レーダ画像処理の検討 エコー画像からFFTフィルターを用い,卓越波動成分(周期≒8s,12s)を取り出して画像を再構成した.これらの画像では,卓越周期成分の波が沖合から汀線にかけて屈折する状況が,原画像に比較してより鮮明に現れる.再構成された画像に対してPIV的な解析を施し,各地点における波峰の移動方向(波向)と移動速度(波速)を推定した.推定された波向の岸沖分布には屈折状況が捉えられており,これは周期毎に差異が見られた. ・エッジ波の検出レーダ画像処理の検討 各画像から1本の岸沖方向の輝度データを取り出し,これらを時間方向に並べて表示することにより,個々の波の沖合からの伝播・遡上状況が明確になる.波の数は汀線に近づくにつれ減少し,大きい遡上は数十秒の間隔で見られた.各沿岸位置で波の遡上位置を読み取った.沿岸方向の遡上高さの時間変化を調べたところ,遡上高さが相対的に大きくなる領域が沿岸方向に移動している状況が捉えられた.これらの伝播速度(おおよそ13〜15w/s),発生周期(おおよそ40〜50s)は一様勾配上のエッジ波の分散関係式をほぼ満たしていた. ・新潟港西海岸における観測 複数の構造物が投入されている複雑な海域でのレーダ観測を行った.潜堤の波浪減衰効果,高波浪作用前後の汀線形状の変化などを捉えることに成功した.
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