研究概要 |
河川と海岸および沿岸域にわたる広領域を一連の流砂系としてとらえ,系全体での土砂動態の解明を通じて長期海浜過程の実態を解明した.平成16年度には,平成15年度に実施した河口周辺の長期海浜地形変化を継続し,久慈川・那珂川・常磐海岸で総合的な観測を実施するとともに,相模川河口干潟や韓国始華干潟において地形変化と底質分析を実施した. 河口周辺の地形変化に関しては,相模川河口にビデオカメラを設置し,約2ヶ月間にわたって砂州の復元過程をモニタリングするとともに砂州が河川・沿岸環境に与える影響を整理した.その結果,砂州の存在が,鳥類を含む生態系および河口を航行する小型船舶の交通に大きな影響を及ぼしていることがわかった.さらに,淡塩水の混合については,河口から上流数kmにわたってその影響が顕在化することも数値実験により明らかとなった.久慈川・那珂川・常磐海岸における調査では,久慈川由来の石英質の砂の分布範囲を砂の明度の解析で解明した.その結果,どちらの河川も海岸地形形成に本質的な役割を果たしており,主として河口から南側の海浜へ土砂を供給していることが明らかとなった. 干潟の調査では,過去に実施した東京湾三番瀬における観測・分析手法に基づいて,韓国始華干潟において調査を実施した.締め切り堤内側の水域において,水門付近から上流までの三点で底質コア試料を採取し,粒度分析,放射線強度分析などから,底質の堆積過程と人為改変の影響を明らかにした.その結果,干潟上流部では,堆積層が厚く,人為改変の影響を強く受けていることが明らかとなった.これらにより,流域の人間活動の影響が干潟地形および沿岸域環境の広い範囲に及びつつあることが定量的に示された.
|