研究分担者 |
磯部 雅彦 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (20114374)
鯉渕 幸生 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (60349800)
田島 芳満 東京大学, 大学院工学系研究科, 講師 (20420242)
本田 隆英 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (70361524)
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研究概要 |
平成17年度は研究の最終年度にあたるため,表層底質に関する現地調査を追加するとともに海浜の長期変形機構を表現する数値モデルを構築し,研究のとりまとめを行った.現地調査は,那珂・大洗海岸を対象とした.同海岸には,久慈川と那珂川が流入しており,その流域を含めた広い地域を調査対象領域とした.まず,過去の空中写真や海岸・河川の地形測量データなどを収集・分析し,河川流域内および河川から海岸域への土砂供給量の変遷を推定するとともに,流砂系における土砂移動実態の変遷を把握した.そして,山地から河口・海岸までの広い領域における表層堆積物を採取して,粒径,鉱物組成,色彩などの「質」に関する分析を実施し,流域や海域におけるさまざまな人為的改変が長期的な土砂動態の変化に与えた影響を定量的に解明した.那珂・大洗海岸では,久慈川支川の上流部に花崗岩質の特徴的な地質を持つ地域があるため,久慈川から供給される土砂は石英質が多く,明るい色彩を有している.したがって,同流砂系の土砂動態を推定するには,粒径や鉱物組成の分析に加えて,砂の色彩度を指標とする分析が有効であることがわかった.色彩度を含めて分析した結果,久慈川,那珂川ともに,土砂の分布域は河口から南側を中心とした領域に広がり,北側への輸送は限定的であることが確認された.また,ひたちなか港や大洗港を代表とする大規模構造物の影響により,地形のみならず表層土砂の質も大きく変化していることが確認されたため,大洗海岸を対象として,大規模沿岸構造物が海浜の長期変形に及ぼす影響を分析した.波・流れの数値計算結果と地形変化データを比較検討することにより,従来の砕波波高を用いたモデルでは表現できない広範な侵食機構が海浜流の発達を介して長期にわたって持続することが明らかとなった.
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