研究課題
基盤研究(B)
メソスケール以上の乱流を対象とする気象分野では都市の地表面の凹凸は直接解像されず、一方、単体建物周囲の詳細な流れを対象とする土木・建築分野のCFDでは、建物群全体として大気乱流へどのような影響を及ぼしているかという視点が欠如している。しかし、都市接地境界層と大気境界層における乱流相互作用の解明は、次世代の高精度都市気象予測上きわめて重要な鍵を握っていると考えられている。本研究では、この境界領域に着目し、建物・道路などの複雑な都市のインフラストラクチャーを陽的に解像したLESにより、都市大気の乱流構造をシミュレートした。このモデルと比較する形で、鉄塔による乱流観測およびスケールモデル実験を行い、総合的な理解を試みた。得られた主な成果は以下のとおりである。(1)規則的な建物配列を想定したLES数値実験により、建坪率(0.11から0.51まで7段階)、建物配列(正規・千鳥の2段階)を変化させてそれらの大気への影響を調べ、都市境界層にほぼ普遍的に存在する大規模乱流構造の実態を明らかにした。また、この大規模構造が乱流輸送過程に大きく影響していることを明らかにした。(2)住宅街の鉄塔の乱流計測からは、植物キャノピーと植物キャノピーの乱流構造の違いなどの点について、LESの結果を指示する結果が得られた。(3)LESを実際の都市域へ拡張するツールとして、建物キャノピー内の低計算負荷放射モデルを別途開発し、スケールモデル実験と比較することによってその妥当性を証明した。これにより、放射計算を含んだより実際的なLESモデル開発への道が開けた。
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