研究概要 |
東京湾においては長年にわたる環境の劣化が進行し,生態系の劣化が益々深刻なものとなっている.このような背景の下,東京湾の再生が声高に叫ばれるようになり,様々な環境再生事業が検討されるに至っている.しかし個々の事業それぞれによる環境の改善効果は必ずしも大きくなく,様々な方策の有機的な組み合わせと,数十年以上の長期的取り組みが不可欠である.そのため,数十年スケールでの環境改善の展望を説得力を持って国民の前に示すことが必要であるが,現在の環境予測技術ではこれに答えられないのが現状である.そこで,本研究では東京湾における過去50年スケールの開発と環境劣化の変遷過程を定量性に重点をおいて明らかにし,これらの変遷過程を精密にかつ客観性を確保しながら再現可能な数値モデルを開発することで,長期的な環境変化の予測手法の提案を目指す. 今年度は埋立の影響を直接受けた東京湾三番瀬に着目し,埋立地形直近における底質の堆積過程について現地調査を実施した.その結果,三番瀬の猫実川河口域には砂泥が堆積しているが,局所的には軟泥が堆積していることが明らかとなった.場所によって底質粒径の著しい差異が生じる原因について考察したところ,軟泥は砂層地盤の凹部に堆積していることが判明した.また,三番瀬に最近発達しているカキ礁の形成にも過去の砂層地盤の形状が関係していることがわかった. 次に数値モデルについては数値生態系モデルのプロトタイプを完成させ,長期高解像計算用の計算結果の可視化システムを構築した.これにより,空間3次元の時系列データから各種断面や時系列の可視化が可能となり,計算結果を評価し考察していくための基盤が整備された.
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