研究概要 |
1.離岸流の発生条件に関する現地観測 鳥取県浦富海岸で9月2日から13日の間,飛行船搭載のビデオカメラによる極浅海域の流況観測と複数のK-GPSを用いた相対測位法による海底地形の精測を行った.ただし,この間,7日から9日にかけて台風が来襲し,実測は行えなかった.台風来週前の9月3日(入射波高増大時)及び台風通過後の9月12日(入射波高減衰時)に,リップチャネル上で発生する典型的な地形性離岸流の流況と海底地形の計測を行うことができた.前者の最大流速は0.7m/sに及び,後者は0.2m/sであった.これらの離岸流の流況は,すでに開発している波浪変形と海浜流の数値計算手法で十分な精度で再現することができ,波浪・海浜流シュミレーション手法の妥当性が現地海岸で検証された.また,実測された流速に含まれる長周期変動は,入射波の波群に伴うset-down waveが関わっていることも明らかになった. 2.不安定解析によるカスプの波長推定 地形性離岸流と深く関わるラージカスプの波長がどのような要因によって決定されるのかということを,上記海浜流数値計算に用いた基礎式と漂砂移動の連続式に基づき,汀線方向に与えた微小擾乱の線形増幅率を求めることによって検討した.その結果,波長に一番大きな影響を及ぼす要因は砕波帯幅であることが判明した.この解析によって求められる波長は,浦富海岸での実測カスプ波長及びその他現地海岸で報告されているカスプ波長と一致している. 3.離岸流の発生条件について 検証された波浪・海浜流シミュレーション手法を用いてさまざまなモデル海浜(ラージカスプ地形,ラージカスプ+クレセンティック・バー地形など)上でのパラメータ解析を行った.このとき,モデルカスプの波長は,2.で得られた結果に基づいて計算を行っている.解析の結果,以下のことが明らかになった. ・ビーチカスプ上では,汀線の凹部から典型的な離岸流が発生するが,潮位が低下し,波浪変形に及ぼすカスプ地形の影響が小さくなるにつれて離岸流は消滅する. ・ビーチカスプの沖にバーが存在する条件では,入射波高が大きい場合は汀線の凸部から離岸流が発生するが,入射波高が減少し,バーの岸側で砕波するような条件になると汀線の凹部から離岸流が発生する. ・カスプ単独地形状での離岸流は,汀線の法線方向から入射角が最大30度程度まで増大しても存在するが,バーは存在する場合の離岸流は,入射角が15度程度で消滅し,蛇行する沿岸流へと変化する.
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