研究概要 |
本研究は,PIV, PTVシステムの餌・空間解像度の向上を図るとともに,多孔質体間隙流速の計測および固液混相流場の計測を通して,固体・流体間相互作用の結果として生じる乱流諸量の定式化を図ることを目的とするものである.本年度は,乱流諸量の推定方法について検討した.実験では,シリコン(KE108:信越化学(株))を用いて直径D=2.0cmの真球を作成し,この真球をさらにシリコンを用いて接着して多孔質体模型を作成した.これを,U字型管水路の中央部に設置し,その一端から重量百分率濃度約40%のヨウ化ナトリウム水溶液を注入し,一方向定常流を発生させた.流速U$は,レイノルズ数ReがRe=UD/ν=554,776,1220(ν:ヨウ化ナトリウムの動粘性係数)となるように3通りに変化させた.流速の計測には,竹原らの開発したSuper-Resolution KC法を用いた.トレーサーには,その比重がヨウ化ナトリウム水溶液とほぼ等しい,粒径約50μmのポリ塩化ビニール製の粒子を用いた.ダブルパルスYAGレーザーからのレーザーシートを管水路の流軸の中央部に照射し,このレーザーシート内で照射されたトレーサー粒子を,CCDカメラで撮影し,1008×1018画素の画像情報を得た.1/15秒間隔で一対のダブルパルスレーザー光を照射し,60秒間の計測を行った.900組の画像を基に任意地点で求められた流速の計測値を,逆距離加重法を用いて格子点における流速値に変換した後,これを用いて,乱れの運動エネルギー(κ),エネルギー逸散率(ε),渦度(ω),乱れの積分時間スケール(T_E)などの乱流諸量の空間分布について検討した. 本実験より得られた結果を要約すると以下のようである. (1)屈折率整合法を用いることにより,多孔質体間隙部を流れる流体(トレーサー)の運動が撮影できるようになった.計測結果によれば,一方向流中に多孔質体が設置されているにもかかわらず,間隙内では逆向きに流れる場合もあることなどが明らかになり,多孔質体間隙部では複雑な流れ構造を有していることが計測により明らかになった.(2)得られた流速データをu=u^^-+u'(^^-は時間平均量,'は平均量からの偏差)とレイノルズ分解し,これを基に乱流量を推定した.一様流速Uで無次元化された乱れの運動エネルギーκは,いずれのレイノルズ数の場合においても多孔質体間隙部を流下するとともに増加し,多孔質体の下流端からおよそD以上流下するとほぼ同じ値を有して減少していく傾向が見られることが明らかになった.(3)一様流速ひと粒子径Dを用いて無次元化されたエネルギー逸散率εも,多孔質体内間隙部ではκと同様に増加傾向を示すことが明らかになった.下流域におけるその分布は,レイノルズ数によってその大きさは異なるものの,およそ2D以上離れるとその減少の割合は同じになることが明らかになった.
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