研究概要 |
本研究は,人間の選択行動を表す非集計型離散選択モデルをベースに,通常用いられる過去の経験データを性質の異なる様々なデータソースと融合して用いる方法論を展開し,需要予測精度の向上を図るものである. 今年度は,まず,交通需要の総量に関する情報を含む集計データを有効活用すべく,集計データを代表的個人を想定した非集計データに変換し,重み付き最尤推定法により未知パラメータを推定する方法論を開発した.その上で,全国規模での影響が予想される新規都市間高速鉄道の整備事業を対象に,通常のRPデータ,新規サービスへの利用意向を尋ねたSPデータ,全国の交通需要を反映した集計データである幹線旅客純流動データを同時に用いた統合型需要予測モデルを構築し,需要予測および便益評価を通じてその有効性を確認した. 次に,プローブカーデータの経路選択行動分析への適用に関する研究を行った.まず,位置データであるプローブカーデータから選択経路を特定するアルゴリズムを開発し,次いで,簡便な経路選択モデルを構築して分析を行った.その結果,プローブカーデータは選択経路のみならず,道路ネットワークにおける交通状態についても詳しい情報が得られるため,経路変更などの動的な行動側面についての理解やモデル化に極めて有効であることが確認された. 経路変更のような動的な行動側面の把握や交通情報に対する反応行動の分析には,人間の認知資源の限界を意識した限定合理性の概念に基づく選択モデルが有効であると考えられる.そこで,当該研究グループが開発した修正辞書編纂型意思決定ルールを採用した選択モデルを対象として,適用上問題となるモデル推定精度について分析を行った.その結果,選択結果のデータのみから意思決定構造を逆解析的に推定することは困難であるが,重視する属性の順番など意思決定の内面に関するデータ援用することで,推定精度が向上することを確認した.
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