研究概要 |
本研究では,移動体通信のひとつであるPHSの位置特定機能を利用した行動調査に関して,交通計画の目的や空間スケールに合わせて,適切な精度と量のデータを収集・加工するためのプロセスと方法論に関する研究を行うことを目的としている.昨年度は,「移動体端末を用いた行動調査の既存手法の調査」「移動体端末を用いた行動調査における既存手法の改良のための技術的課題の発見」「移動体端末を用いた行動調査の実施」を行い,さらに「開発した手法の計算機シミュレーション上における評価」を行った. 本年度は,昨年度の実績,特に実際に行われた行動調査の結果を用いて,移動体通信のデータから交通行動をどのように把握できるか,その手法と結果を確認することを行った.まず,昨年度行われた行動調査で取得されたデータを軌跡データに変換することを行った.行動調査で取得されたデータは被験者が所持したPHSによって測定された電界強度であり,被験者の行動を調べるためにはまずこのデータを軌跡データに変換する必要がある.本研究では,昨年度開発した手法を用いて電界強度データを軌跡データに変換した.この手法の誤差は,PHS基地局と位置特定のために設置される基準点の密度に依存するが,本行動実験では街区単位の行動を把握するのに問題ない精度を確保できた. 変換された軌跡データはあくまでも空間上の軌跡であり,それを人間の行動として把握するにはもう1段分析を行う必要がある.本研究では,特に回遊行動を分析するのに適した「経路トポロジー」という指標を開発した.これにより,複数の被験者をその回遊行動に基づいて効果的に分類できるようになる.各分類の特徴に基づいて適切な意味を与えることにより,各被験者の一連の行動に対して解釈を与えることが可能になる.
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