研究課題
下水からの生物学的リン除去は、経験的に、嫌気-好気(A/O)過程により達成可能ではあるが、一方で、実際の処理場では、時としてその除去が不安定となるなど、経験的なプロセス管理だけでは不十分である。このような経験的なプロセス管理に頼らざるを得ない一つの理由はリン除去細菌の単離が未だになされていないためである。ここでは、良好なリン除去能を有する活性汚泥中での主流派の菌群である酢酸資化性リン除去純粋菌を対象とする。また、リン除去細菌の多くが脱窒能を有しており、下水処理システム内でのこの脱窒脱リン細菌の集積により、より質の高い高度処理が達成可能である。本研究では酢酸資化能を有する脱窒脱リン細菌の単離とその生化学的情報の下水高度処理システム最適運転管理への応用を試みた。本年度、下記の研究を実施した。(1)自作のスクリーニング装置内に集積された菌群を植種して平板寒天法により単離した。16S rDNAをシーケンスし、同定を行った結果、昨年度までの8種類の純菌に加えさらに1種の純菌が得られた。しかしながら、全ての純菌は、脱窒脱リン細菌が有すべき特性を定量的には示さなかった。(2)FISH法・DGGE法により、嫌気-無酸素連続スクリーニング装置内には、嫌気-好気法においてしばしば観察されるRhodocyclus属が3割ほど存在することを明らかにした。一方、このように高度にRhodocyclus属が集積されているにもかかわらず、それを単離できないということは、平板寒天法ではコロニー化できないという結論に達した。単離の条件を変えて、Rhodocyclus属の単離にターゲットを絞ったが、単離の成功には至らなかった。(3)従来のASMでは不十分であるため、脱窒脱リンプロセスをモデル化して下水処理水質を予測するモデルを構築した。脱窒脱リン菌の集積には「後脱窒システム」が有効であるとの結論に至った。
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Journal of Environmental Science and Health, Part A Toxic/Hazardous Substance & Environmental Engineering A41・8(in press)
Proceedings of the International Water Association (IWA) Conference 2005, Xi'an
ページ: 649-656