研究概要 |
施工性・解体性を考えた木質パネルの開発にあたり,先ずはストレストスキン効果を利用した木質パネルの開発を行い,その力学的性質を調べ,また剛性・耐力の評価式を提案した。ストレストスキン効果をより合理的に用いることが可能な木質パネルとして2タイプを開発した。接合部の折れ曲がる部分においてストレススキンを連続させるために,アルミプレートにより接合するタイプと合板リブにより接合するタイプである。実験より以下の結果を得た。A)回転剛性の比較:ストレススキンなしのパネル接合部は,合板分の断面2次モーメントの増加により回転剛性は若干増加したが,およそリブ接合部の2倍であった。アルミ接合型はリブ接合部2本分と比較してopening-modeで平均1.8倍,closing-modeで平均4.6倍回転剛性が増加しており,また,パネル幅の増加によっても回転剛性は増大した。合板リブ接合型ではおよそリブ接合部と合板リブ接合部の回転剛性の和と同じであった。B)最大耐力の比較:ストレススキン効果なしのパネル接合部は,およそリブ接合部の耐力のみとなっている。パネル接合部ではアルミ接合型が,リブ接合部と比較してopening-modeで平均1.3倍,closing-modeで平均3.1倍,増加し,合板リブ接合型ではopening-modeで平均1.9倍,closing-modeで平均2.5倍増加した。C)剛性と耐力の理論的推定:リブ接合部,アルミ接合型パネル接合部および合板リブ接合型パネル接合部のそれぞれに対し,回転剛性および最大耐力の推定式を提案した。これらの推定式による結果と実験結果を比較した結果,いずれの場合も十分な精度で推定できることがわかった。以上のように,ストレススキン効果を用いた木質モーメント抵抗接合を提案し,その回転剛性と最大耐力の推定式を示し,これらにより精度よく予測できることを示した。この接合部を用いることにより,リブ材のみの接合部よりも小断面で想定した架構を成立させることができることを示した。 続いて施工性・解体性を考え,鋼板と国産杉集成材のハイブリッド部材の開発を行った。既往の研究では,集成材の曲げ剛性を用いて鋼板の座屈拘束することの有効性などが報告がされており,集成材と鋼板の接合には接着剤やドリフトピン接合を用いたものが多い。接着剤は解体に難があり,ドリフトピン接合は力の伝達メカニズムが複雑である。これらを考慮して本研究では,杉集成材の曲げ剛性を用いて,鋼板の座屈拘束をしたハイブリッド部材において,集成材と鋼板の接合にシアリング接合を採用した。シアリング接合は,解体・組立が容易であり,せん断力の伝達に優れている。提案したハイブリッド部材について,部材軸圧縮実験・部材曲げ実験を行い,その座屈拘束効果を中心とした力学的挙動を明らかにした上で耐力評価法を提案した。また,シアリング接合部要素実験を行い,シアリング接合部の剛性に関する基本的なデータを得た。部材軸圧縮実験により,シアリング接合を用いて,杉集成材で鋼板の座屈を拘束できることを示した。軸圧縮荷重を受ける場合の座屈モードは大きく分けて,全体で弾性座屈を起こす場合と端部で局所的な座屈を起こす場合に分類できた。全体で弾性座屈を起こした場合の座屈荷重は,集成材を一体とした場合のオイラー荷重と別々とした場合のオイラー荷重の間の値であった。シアリング接合数を増やすことで鋼板の座屈拘束効果が有効に働くことがわかった。端部で局所的な座屈を起こした場合の座屈荷重はJohnsonの放物線式によって評価できた。部材曲げ実験により,シアリング接合を用いて,杉集成材で鋼板の横座屈を拘束できることを示した。
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