溶接欠陥が継手の変形能力に及ぼす影響を定量的に把握するためには、様々な溶接欠陥を一意的に評価する必要がある。評価方法として応力拡大係数Kの等価側を用いたWES2805のき裂特性寸法がある。しかし、WES2805は中央欠陥を想定したものであるため、端部及び中央欠陥を一意的に評価することができない。また、建築鋼構造の柱梁溶接接合部は応力の変化が激しい部位であるため、欠陥の位置の違いを考慮する必要がある。 また、現在の超音波探傷試験による合否判定では、溶接線内の欠陥は全て同じ扱いとなっている。しかし、破壊力学的な観点から判断すれば、内部に欠陥がある場合には端部に欠陥がある場合の2倍程度の欠陥長さで概ね同程度の性能を発揮すると想定される。 本年度は、欠陥の高さ及び欠陥位置をパラメータとして引張破壊実験及び数値解析を行い、端部部分欠陥及び中央欠陥の欠陥評価をおこない、様々な溶接欠陥を一意的に取り扱う等価貫通欠陥長さに関して検討した。 得られた知見を以下に示す。まず、J積分の等価側を用いた等価貫通欠陥長さは、欠陥の大きさ及び位置の関係を端部貫通欠陥として一意的に評価することができる。中央欠陥は、端部欠陥と比較しても破壊しずらく、中央欠陥が2amm、端部欠陥がammとした場合においても端部欠陥の1.5〜2.0倍の変形能力を持つ事が分かった。b/t(板厚に対する欠陥高さの比率)が0.7以上の欠陥は、ほぼ貫通欠陥とみなすことができる。b/t=0.22のように欠陥高さが低いものは、欠陥長さが長くても変形能力は低下しないと考えられる事が分かった。
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