本年度は、構築物のためのセミアクティブ自律分散制御のあり方を探るための基礎研究として、(1)ダンパ試験機を用いたダンパ加力試験と数値解析を組込んだ解析手法の開発、(2)圧電アクチュエータを用いた微振動制御の基礎的検討、(3)スマートセンサーを用いた構造物の応答モニタリングシステムの構築、について研究を行った。 (1)は、構造物の応答を数値解析で、ダンパー応答を加力試験により求め、それらを有機的に複合するものである。本手法を用いることで、ダンパーの特性と構造物の応答を、より詳細に実物理現象に近い状態で把握可能となる。本年度は、来年度のための基礎資料を蓄積した。 (2)は、圧電アクチュエータの構成方程式を取入れた新たな制御則を提案している。また、実構造物に圧電アクチュエータを設置することを想定した、片持ち梁の振動台実験を行い、本手法の有効性を確認している。 (3)は、自律分散制御システムの重要な構成要素となる制御用プロセッサーを用いた構造物の応答計測システムと本システムを用いた応答モニタリングに関するアルゴリズムについてのソフト・ハード両面からの研究である。ハード面での研究として、カルフォルニア大学バークレー校が開発したワイヤレススマートセンサーMICA MOTEをもとに、新たに加速度センサモジュールを試作し、より建築構造物に適した応答計測システムを提案した。また、ソフト面からの研究としては、制御用プロセッサー上で処理を行う、簡易な応答モニタリングについてのアルゴリズムを開発した。提案した計測システムおよびアルゴリズムを用いることで、より安価で効果的なセミアクティブ自律分散制御システムが構築できると考えられる。 本年度の成果の一部は、2004年度建築学会大会で発表予定である。
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