本年度は次年度の成果を受けて、自律分散システムをキーワードとして、(1)MRダンパーをセミアクティブ自律分散制御装置とする場合を想定した、ダンパー試験機を用いたダンパー加力実験と数値解析を組合せた制御効果の確認、(2)圧電アクチュエーターを用いた微振動制御のための圧電アクチュエータを用いたシステムの構築、(3)自律的な計測データ処理の可能な、マイクロプロセッサー内蔵のスマートセンサーの使用を前提とした自律分散応答モニタリングシステムの構築、について研究を行った。 (1)は、昨年度より行っている制御効果評価法であり、多層構造物にダンパーを設置した大型の試験体を製作することなしに、セミアクティブ制御されるダンパーの制御効果を実現象にそったかたちで確認できる。構造物の応答を数値解析により、MRダンパー応答を加力実験により求め、それらをオンライン的に融合して、制御効果を確認した。また、MRダンパーは、MR流体の経時的な沈殿状況の変化によって、制御効果が変わる。この変化を考慮した対処法について基本的な方向性を明らかにし、その有効性を確認した。 (2)は、昨年までの片持ち梁を用いた制御実験で得られら知見をもとに、中央に圧電アクチュエーターを設置した単純支持梁の微振動制御を行い、その効果を確認した。 (3)は、将来的な自律分散システムの構成に、重要なツールとなることが予想されるスマートセンサーに関するハード、ソフト両面からの研究である。すでに昨年、MICA MOTEをもとに、より建築に適した加速度センサーを製作したが、地震直後の、このセンサーの使用を前提とした簡易な緊急健全性判定の開発も行った。このようなセンサーは、今後の制御およびモニタリングシステムを有機的に融合したスマート構造の構築に向けたキーとなるものである。
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