研究概要 |
研究最終年の本年度は、(1)「加振実験及び地震観測のデータ解析」、(2)「簡易モデルの構築」,(3)「新しい減衰体の試作」の3テーマを掲げた。本報告書では(1)および(3)に的を絞って報告する。 前年度までの加振実験及び地震観測のデータに新たな収録データを追加して,改良型基礎の性能の再検討をした。その結果、改良型基礎ブロック(IF)は従来型基礎ブロック(CF)に比べ,減衰性能および振動低減が定量的に明らかになった。まず,加振実験結果から,IFはCFに比べ共振振動数での単位加振力当たりの応答変位が約30%低下することが確認された。次に、新潟県中越地震をはじめとする32波の地震観測のデータから,基盤に対する基礎ブロックの伝達関数を推定したところ,周波数によって異なるがIFはCFに比べ応答低減が確認された。しかしながら,低下率は加振実験ほどではない。これは、基礎ブロックの寸法が小さいことや地震時の側面からの入力が小さいことに起因している。 3次元薄層法および本研究費で導入したTDAPIIIによるシミュレーション解析は、加振実験や地震観測でのIFの減衰性能や振動低減をよく表現することができた。しかしながら、地震観測のシミュレーション結果は加振実験の結果に比べ,対応があまり良くない。このことから,地震時の振動は近傍の構造物や地盤の不整形性の影響を強く受けることが示唆された。 IF周りに打設した減衰材をさらに発展させて,平常時の機能として植栽基盤に適用できる可能性を探るため、研究分担者・川村政史が植栽用木片チップを混入させた減衰材を試作した。繰返し三軸試験の結果、減衰材として有望であることが確認された。この減衰材は,基礎回りの空地に打設することで、駐車スペースや緑化スペースとしての利用を想定している。今後、複数の配調合法に基づき、植栽基盤としても利用できる新たな減衰材を提案する予定である。
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