研究概要 |
本研究では,多人数によって利用されるオフィス空間や学校の教室などを対象とした,省エネルギー型の温熱環境設計を支援するため,温熱快適性に対する人の代謝量変化および体温調節行動の影響を正当に評価するための手法を開発する。また,知的生産性の観点から,人の体温調節行動に期待した省エネルギー型温熱環境について,従来の基準に沿った温熱環境との差を明らかにする。 本研究は,平成15年度から平成17年度までの3年間の継続研究であり,最終年度である本年度の研究実績は以下の通りである。 1)オフィスや教室などにおける温熱的非定常性・体温調節行動・温熱快適性の実態把握 ・昨年度に引き続き,オフィスビルとして,仙台市の建物1件を新たに追加し,各月の1〜2週間に室内温湿度の長期実測とインターネットを用いたアンケート調査を実施した。また,季節ごとにそれぞれの建物において移動計測カートによる室内温湿度・風速分布の詳細測定を実施した。 ・その結果,各建物における温熱環境特性について明らかにし,代表的な適応行動である着衣調節に関して,外気温,室温,着衣種別の影響を定量的に明らかにした。また,温熱環境の操作しやすい建物と操作しにくい建物の二つのグループについて温熱感覚に相違がみられるかを検討したところ,本調査においては明確な差が見られず,どちらのグループにおいてもSET*=26℃の条件が最も好まれていることが明らかになった。このような結果に基づいて,日本のオフィスにおける外気温と快適温度の関係を求め,de DearらのAdaptive Modelと比較したところ,両者の間には相違がみられた。
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