研究概要 |
本年度は流出側開口部周辺における気流構造の把握,研究代表者が提案する局所相似モデルの流出側開口部への適用を目的とした風洞実験・CFD解析を中心とした一連の研究を行った。 風洞実験では流出側開口部の通風性能評価を可能とするアタッチメントを開発した。本装置は一般的な風洞装置へ組み込むことも可能であり,風洞装置を利用した評価手法についての提案を行った。CFD(LES)解析により妥当性の検討を行い,本評価手法によって,局所相似モデルにおける唯一の変数である無次元室内圧P_R^*により,流出側開口部における流量係数変化も一元的に整理することが可能であることを示した。 流出側開口部の通風現象について考察する際に重要となる流入側気流の残存動圧について,CFD(LES)解析による検討を行った。また,流出気流と屋外気流の合流により生じる流出側開口部周辺における圧力場の変化が流出側開口部の流量係数変化の大きな要因の一つであることを見出した。一連のCFD(LES)解析により,流出側開口部において流量係数が低下する大きな要因の一つは,屋外気流により流出気流の流路が狭められるためであることを示した。 流出側開口部における無次元室内圧P_R^*の発生頻度について実際の住宅を使用した実験を行った。結論として,流出側では流量係数が大きく変化する無次元室内圧P_R^*<2の領域の発生頻度は10[%]以下であることを示した。 これらの一連の成果は,第一回自然換気に関する国際ワークショップ(2003年)における公開用資料集の参考資料として掲載され,海外の研究者を交えた非公開討論会において口頭発表を行った。空気調和・衛生工学会(2003年)においても口頭発表を行った。これらをまとめた論文が,The International Journal of Ventilationに掲載された。 また、通風による冷房用エネルギーの低減効果を見積もるため、集合住宅の一住戸を対象としたシミュレーションを実施した。特に、負荷を最小化するような窓開閉および冷房スケジュールについて最適化手法を用いた検討を行った結果、顕熱負荷の最小化については内外温度差のみで窓開閉を判断すればよいことが分かったが、全熱、あるいは消費エネルギーの最小化は室の潜熱容量、換気ファンの稼動時間などに複合的に依存する可能性を明らかにした(2003年空気調和・衛生工学会にて口頭発表)
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