1.研究の目的 今年度では、立地条件・建築規模・空調設備の異なるオフィスビル10箇所における空調システム内微生物汚染の実態を調査し、次年度の研究、即ち汚染メカニズムの解明と対策を適正に行えるための基礎データを得ることを目的としている。 2.実施状況と成果 計画通り研究を実施し、当初期待の成果が得られた。以下に主な成果を示す。 (1)空調運転と管理実態:全国ビルメンテナンス協会所管の全国9つブロックを対象に、空調設備の維持管理現状に関するアンケート調査計280件を行った。有効回答の70%について行った統計解析の結果、(1)地域・建築規模による空調設備とその維持管理の差はない;(2)建築物衛生法の対象であるかどうかによって、中性能フィルタの設置やコイル・加湿器の清掃において有意な差が認められた。法対象外の全ては中性能フィルタを備えておらず、殆どはコイルと加湿器の清掃が行われていない、との実態を把握した。 (2)空調システム内微生物汚染の実態:エアフィルタ・熱交換コイル・加湿器・ダクト内・吹出口の表面に多くの細菌と真菌が付着しており、室内空中の潜在的な汚染源になっていることを明らかにした。 (3)空調システム内微生物汚染の評価方法:空調システム内微生物の生育環境をカビ指数による定量的な検討を行った結果、冷却コイル下流からダクト内までの間は微生物生育の好環境となっていることを明らかにした。また、相対湿度70%以上の出現時間を少なくすることは微生物汚染の対策になることがわかった。 (4)空調システム内微生物汚染による室内への影響:空調システム内微生物による室内への影響を把握するために、フィールドでエアフィルタの捕集率について検証を行った。その結果、黄色ブドウ球菌、細菌、真菌に対するそれぞれの捕集率は1μm以上、2μm以上、5μm以上の浮遊粒子に対する捕集率とほぼ等しいことを見出し、エアフィルタによる微生物の除去率を定量化した。
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