本研究の目的は、サポート産業の中核技術になり得る建物評価・情報開示技術と、インフィル産業の中核技術となり得る回収・再利用可能な家具的なインフィル実装・運用技術を確立し、適用可能な形で提案することにある。また、これら中核技術の検討では、生活者にとっての価値を高めることを最優先課題とし、新しいライフスタイルへの適応性を主たる評価軸としている。 研究の2年度目である本年度は、主として以下の研究を実施した。 (1)サポート産業の中核技術に関しては、昨年度に引き続き、既存建物の経年劣化現象に関するデータを収集し、昨年度雛形を作成したデータベースの拡充を図った。具体的には、画像情報の整理法を確立し、診断業務等に対してより利用しやすい形を実現した。また、建物各部の劣化現象の診断とその処置方法に関する文献やマニュアル類を広範に収集し、その記述を部位ごとに整理し、相互の矛盾点等を見出す作業を行った。これにより、現在のマニュアル類等の不備、および学術的に確定されていない劣化要因や処理方法が抽出できる。 (2)インフィル産業の中核技術に関して、在宅介護が必要となった人の生活を支えるインフィルの計画案について、インフィル開発に造詣の深い海外の研究者20名以上に見てもらい、改善すべき点等に関する専門的知識の収集を行った。 (3)インフィル産業の中核技術に関して、少子社会に対応すべく、子育てを支援するインフィルの開発に着手したが、新たにティッシュ・レベル、サポート・レベル、インフィル・レベルでの支援内容の分担関係の定義が必要であることが明らかになり、そうしたレベル間の分担関係についての整理を行うと同時に、新たなインフィルを挿入することで、1棟の空きオフィスビルを転用し、都心での子育て支援を行う環境形成の設計案を立案した。これに基づき、開発すべきインフィルの詳細な仕様の特定が可能になる。また、インフィルの開発仕様の決定に関して、海外の専門家の専門的知識の収集を行った。
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