1)実測済みのロマネスク建築の実測寸法値の整理と実測平面図・寸法図の作成を継続したが、特に今年度は、寸法図の作成について大きく進展した。詳細に各部位の実測寸法値を記入した平面図を、すでに実測平面図を作成してあるものについてはおおむね作成した。ロマネスク建築の寸法の実際をよく示す貴重な資料となり得た。また、実測平面と寸法図のほとんど全てCADデータ化を完了した。この成果は著書『シトー会建築のプロポーション』に十分に活かされている。 2)造形原理としての寸法の分析・検討・考察の方法の確立 著書『シトー会建築のプロポーション』の執筆を通じ、現在まで得ていた様々な知見が整理され、同書の中にも記したように、実測値と実測平面図を基にして設計手法、象徴性、度量衡という三つの観点と意味を寸法の中に見い出す分析方法が概ね確立された。この点については、とりわけ海外共同研究者であるAlain Guerreau氏の貢献は大きく、氏の既往研究と氏からの助言は造形原理としての寸法の読み方に多く寄与した。ロマネスク建築の寸法が極めて両義的である事を具体的に確認した。 3)補足的な現地調査の実施 初期のシトー会教会堂2件、プロヴァンス・ロマネスクの教会堂と回廊を各々1件、パリ市内のロマネスクの住居建築1件を中心とする実測を行った。今年度は今まで以上に詳細な実測が可能となり、実測平面図と寸法図もこれらの内のいくつかについては既に作成し得たが、その詳細な分析は来年度に持ち越される事となった。
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