研究課題
本研究は、陽電子消滅法と3次元アトムプローブ(3DAP)法を組み合わせることによって、従来の手法では不明であった、材料中のナノクラスターの形成機構、特に、空孔-溶質複合体の形成、その移動によるクラスター形成過程を解明することが目的である。今年度は、Al-Ag2元系合金中に生成する溶質ナノクラスターの電子構造、さらにクラスター中の溶質濃度を主として陽電子消滅法により明らかにした。試料は、単結晶Al-2.0at%AgおよびAl-6.2at%Zn合金を用いた。焼き入れ後に適当な熱時効を行い、マトリックスAlにコヒーレントなAgナノクラスターを作製した。陽電子は合金試料中のAgナノクラスターに捕獲(陽電子親和性捕獲)されることが、同時計数ドップラー広がり測定によってわかった。そこで、陽電子消滅2次元角相関(2D-ACAR)測定を行い、クラスターの電子構造(フェルミ面)を明らかにした。Al-Ag合金(すなわちAgナノクラスター)の2D-ACARは、純Agとは全く異なる異方性を示した。Al原子の混入によって純Agの場合よりもFermi球が大きくなり、FCC構造の第一ブリリュウアンゾーンのL点付近のネックの寸法が大きくなるだけでなく、X点にもネックが生じたと解釈できた。これは、AgナノクラスターにはマトリックスのAl原子が25%程度混入していることに対応する。ナノクラスターの数密度を定量評価するためには、陽電子の析出物に対する感度を知る必要がある。そこで、今年度は、低速陽電子ビームを用いて陽電子の拡散定数の測定も行った(この測定のため、低速陽電子ビーム高温測定用試料チェンバ、ターボポンプを購入した)。Feに対する陽電子の拡散定数の温度依存性を調べたところ、高温ほど拡散定数が大きくなることがわかった。これはFe中の不純物散乱による効果が大きいことを示唆している。
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