研究課題
基盤研究(B)
磁気とエレクトロニクスを融合する領域として、スピンエレクトロニクスが脚光を浴びている。スピンエレクトロニクスの最も典型的な例は、MRAM(Magnetic Random Access Memory)と呼ばれるメモリである。この考えをさらに発展させ、本研究課題では、コンピュータシステムにおける大部分の機能を、磁性に関する現象で処理する磁性コンピュータシステムの構築に寄与する基礎検討を行った。(1)磁化の向きにより情報を伝達する磁性セルの形状についてのマイクロマグネティクスシミュレーションによる検討を行った結果、アスペクト比1:2の楕円形セルが、比較的情報を伝達しすく、また、「0」および「1」の2値の情報を保持しやすいことを明らかにした。(2)3個の長軸80nm、短軸40nmの楕円形の情報入力セルと、それらと静磁結合する位置に情報入力セルと同じ形状の磁性セルを配置すると、磁化の向きとして3個の情報入力セルに与えた値により磁性セルの磁化の向きが決まり、ある演算結果を示すことを明らかにした。また、3個の情報入力セルのうち1個の情報入力セルに与えた値が「0」の時には、演算システムは「NOR」ゲートとして働き、上述の1個の情報入力セルに与えた値が「1」の時には、演算システムは「NAND」ゲートとして働くことを明らかにした。(3)演算素子を作製するための実験的検討を行い、円形、楕円形の磁性セルは、比較的、低い磁界で磁化反転するため、磁性セルとして好ましい形状であることが明らかになった。また、円形と楕円形磁性セルとの比較では、円形磁性セルは、磁化の渦構造が出現しやすく、一方向の磁化状態とならないため、デジタル情報の格納には不向きであることがわかった。
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