電子の代わりに陽電子を用いて顕微鏡を作成しようとするものである。本研究の特色は市販の顕微鏡をそのまま使用し、長年に亘る企業の電子顕微鏡についての発展技術をそのまま利用するものである。すなわち、電子の代わりに細く搾った陽電子ビームを電子顕微鏡に導入する。電子顕微鏡の陰極電圧を正電圧に変えれば、そのまま陽電子顕微鏡として利用できるというのが特徴である。このための、陽電子光学、設計を本年度も行った。主な改造点は線源部であった。本年度の実験はいいよいよ筑波、高エネルギー加速器研究機構、物質構造研究所、フォトンファクトリーにおいて本格的に始まった。同機構の共同研究および共同開発研究のプロジェクトが本年度から認められ、加速器から既存の電子顕微鏡へ低速陽電子を導入する真空管を引き始めた。持ち込んだ既存の透過型電子顕微鏡の線源部を陽電子用に改造を行った。これにより電子、陽電子両用の線源を備えることができる。また、同ファクトリーのポジトロニュウムタイムオブフライト装置を用いて、低速陽電子ビームの調整、操作の実験を行った。陽電子画像として、イメジングプレートを使う予定であるが、このイメジングプレートの感度が陽電子の速度によることを発見した。陽電子のエネルギーが5keVを境として、イメジングプレートの感度が異なることを発見した。これらの結果は平成17年3月カタール国、ドーハで開催された第10回低速陽電子ビーム国際学会で招待講演として、発表され、世界の注目と大きな期待を得た。
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