研究課題
基盤研究(B)
本研究によって得られた成果は以下の通りである。1.メカノケミカル法により様々な組成のLi_2S-P_2S_5系ガラスを作製し、加熱結晶化によりガラスセラミックスを得た。70Li_2S・30P_2S_5(モル%)組成において析出した結晶相は、一連のチオリシコンとは異なる新規な結晶で、主にP_2S_7^<4->イオンから構成されていた。またこのガラスセラミックスは、室温で2.2x10^<-3>S/cmという極めて高い導電率を示した。2.Li_2S-P_2S_5系ガラスについて、単体からのメカノケミカル合成を試みた。単体から作製したガラスの局所構造は、P_2S_5を用いたガラスと基本骨格において差は無いが、ホモボンドが存在することがわかった。しかし、加熱によりガラスセラミックス化するとホモボンドは減少することがわかった。3.メカノケミカル法を用いてSnS-P_2S_5系負極材料を合成し、共通のガラスフォーマーを有するLi_2S-P_2S_5系固体電解質と組み合わせた全固体電池を試作した。このセルは、室温で50サイクル以上の充放電が可能であり、400mAh/g以上の高容量を保持することが分かった。4.メカノケミカル法を用いたCuとSの直接反応によってCuS-S系正極複合体の合成に成功した。得られた正極複合体とLi_2S-P_2S_5系固体電解質を組み合わせたリチウム-硫黄系全固体電池は、正極活物質に対して600mAh/g以上の大きな放電容量を示し、サイクル劣化がほとんど見られなかった。5.電池のレート特性の向上をめざし、様々な正極複合体の構築を検討した。活物質含量が少ない正極配合比においては、導電助剤の添加により高電流密度下でも充放電が可能となり、助剤としては、ファイバー形状を有するVGCFが少量の添加で優れた充放電特性を示した。また、低電流密度でサイクルを繰り返すことにより、高電流密度下においても高容量の保持が可能になった。
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