研究概要 |
La_XSr_<1-X>FeO_<3-δ>はSOFCのカソード候補材料である.この物質では,La^<3+>をSr^<2+>(Sr'_<La>)で置換すると減少した正の電荷を補償するため酸素イオン空孔(V^<・・>_o)が形成される.このV^<・・>_oは,導電率や磁気転移点などの物性値と密接に関係がある.本年度,La_XSr_<1-X>FeO_<3-δ>について,絶対零度付近から高温までの定圧熱容量(C_p)測定を行い,V^<・・>_o導入に伴う磁気転移点や構造相転移点の変化を検討した.また,極低温のC_pの測定結果からデバイ温度(Θ_D)を決定し,そのΘ_Dに基づいてデバイ関数から定積熱容量(C_V)を求め,V^<・・>_oの導入に伴う格子振動状態の変化を検討した.なお,試料組成は原子の総数1モル,すなわち,La_<0.2>Fe<0.2>O_<0.6>, La_<0.144>Sr_<0.062>Fe_<0.206>O_<0.588>およびLa_<0.105>Sr_<0.105>Fe_<0.211>O_<0.579>と表記した. 標準状態の物質La_<0.2>Fe_<0.2>O_<0.6>では,約750Kにおいて磁気転移,また,約1260Kにおいて構造相転移が起こることが分かった.V^<・・>_oを導入したLa_<0.144>Sr_<0.062>Fe_<0.206>O_<0.588>およびLa_<0.105>Sr_<0.105>Fe_<0.211>O_<0.579>では,これらの磁気転移点や構造相転移点が低温側へ移行し,またその温度範囲がブロードになることが分かった. La_<0.2>Fe_<0.2>O_<0.6>, La_<0.144>Sr_<0.062>Fe_<0.206>O_<0.588>およびLa_<0.105>Sr_<0.105>Fe_<0.211>O_<0.579>について,デバイ関数より基めたC_vを比較した.V^<・・>_oの増加に伴い,C_vが増加することが分かった.これらのC_vを積分して定積状態での298Kにおける振動のエントロピーを計算し,V^<・・>_o濃度で差分することにより,V^<・・>_o生成の振動のエントロピーを見積もると,58.65J・K^<-1>・mol^<-1>となった.この大きなエントロピーがV^<・・>_oを生成させ,導電性を付与すると考えられる.
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