研究概要 |
1.酸性触媒下で加水分解したTEOSの溶液をコーティング液とするゾル-ゲル法によって単結晶シリコン基板上にシリカゲル膜を作製し,5℃/minの速度で500℃まで昇温し,膜応力のその場測定を行った。昇温過程で膜中には面内方向に引っ張り応力が発生した。また,応力は出発溶液中のH_2O/TEOSモル比の増加とともに大きくなることがわかった。昇温過程にある,シリカゲル膜の亀裂発生温度は出発溶液中のH2O/TEOSモル比の増加とともに低下することを以前の研究ですでに明らかにしているが,今回の結果は,亀裂発生温度の低下は,膜中の引っ張り応力の増加によってもたらされていることを示唆するものである。H_2O/TEOSモル比の増加とともに膜応力が増大するのは,主として溶媒蒸発過程で発生する毛管力がH_2O/TEOSモル比とともに増加するためであると考えた。 2.ポリビニルピロリドン(PVP)またはCH_3COOHの存在下でTi(OC_3H_7^i)_4を加水分解して得られるゾルをコーティング液とし,ゾル-ゲル法によって単結晶シリコン基板上にチタニアゲル膜を作製した。チタニアゲル膜を5℃/minの速度で500℃まで昇温し,膜応力のその場測定を行った。いずれの場合にも昇温過程で膜中には面内方向に引っ張り応力が発生するが,PVPまたはCH_3COOHの存在によって膜応力の発生が抑制されることがわかった。この結果は,PVPまたはキレート剤がゾル-ゲルセラミック薄膜の限界厚さを増大させる働きをもつのは,これらが膜応力の増大を抑制するためであることを示唆している。
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