研究課題
ポリビニルピロリドン(PVP)を含有するテトラエトキシシラン(TEOS)溶液を出発溶液とするゾル-ゲル法によって、単結晶シリコン基板上にゲル膜を作製した。ゲル膜のコーティングと焼成からなる1回のコーティング操作によって、亀裂の発生を伴うことなく達成することのできる最大の膜厚(限界厚さ)は、溶液へのPVPの添加によって増大し、過剰量のPVPを加えると減少することがわかった。レーザー光によって基板表面の曲率半径を測定する方法によって、ゲル膜の昇温過程における膜の内部応力のその場測定を行った。その結果、膜の面内方向に発生する引っ張り応力は温度上昇とともに増大するが、出発溶液へのPVPの添加によって応力発生が抑制されることがわかった。ただし、PVPが分解・燃焼し始めると応力は増大した。以上の結果から、出発溶液へのPVPの添加によって限界厚さが大きくなる主たる原因は、PVPによる応力発生の抑制にあると考えた。TEOSの一部をメチルトリエトキシシラン(MTES)に置換した溶液を出発溶液とするゾル-ゲル法によって、単結晶シリコン基板上にゲル膜を作製した。TEOSの一部をMTESで置換することによって限界厚さは増大し、ゲル膜の昇温過程で発生する膜の内部応力は減少することがわかった。TEOSの一部をMTESで置換するとゲル膜中での重合反応が抑制され、その結果、応力発生が抑制されると考えた。また、この応力発生の抑制が限界厚さの増大をもたらすと考えた。以前の研究により、昇温過程におけるシリカゲル膜の亀裂発生温度は昇温速度の増大にともなって上昇することを明らかにしている。TEOS溶液から作製したシリカゲル膜の昇温過程での応力のその場測定を行ったところ、昇温速度を大きくすると応力増大傾向が小さくなることを見出した。この結果から、亀裂発生温度が昇温速度の増大によって上昇するのは、応力発生が抑制されるためであると考えた。
すべて 2005 2004
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Proceedings of XX International Congress on Glass, Kyoto, Sept.27 - Oct.1,2004
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