研究課題/領域番号 |
15360355
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
広崎 尚登 独立行政法人物質・材料研究機構, 物質研究所, 主席研究員 (80343838)
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研究分担者 |
西村 聡之 独立行政法人物質・材料研究機構, 物質研究所, 主幹研究員 (50354428)
田中 英彦 独立行政法人物質・材料研究機構, 物質研究所, ディレクター (40343868)
高橋 純一 東北大学, 多元物質科学研究所, 助手 (20261472)
山根 久典 東北大学, 学際科学国際高等研究センター, 教授 (20191364)
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キーワード | 窒化ケイ素 / 粒界相 / 結晶化 / 希土類元素 / ルテチウム / 高温強度 / クリープ / 耐熱性 |
研究概要 |
窒化ケイ素の粒界ガラス相の完全結晶化により耐熱性向上が期待される。粒界液相の相関系を詳細に検討した結果、原料中に含まれるSiO2不純物が原因で粒界組成をLu_4Si_2O_7N_2(J相)の化学量論組成に制御できていないことが問題であると判明した。そこで、粒界組成を希土類酸化物組成に厳密に一致させるために、従来研究されていない高窒素含有液相を用いて窒化ケイ素を焼結することを試み、以下の成果を得た。 (1)窒化物原料の合成:希土類金属をアンモニア気流中で窒化するプロセスを検討し、Eu金属の窒化条件を確立した。これにより窒化ユーロピウムを合成し、その結晶構造を明らかにした。 (2)J相の結晶構造の解明:目的とする結晶構造であるJ相について、種々の希土類を添加したものを合成し、X線回折およびリートベルト解析により、詳細な結晶構造の変化を調べた。LuやYbなどのイオン半径が小さいグループとLaやCeなどのイオン半径が大きいグループとでは結晶構造が異なり、イオン半径と格子定数の関係が中間点(Eu)で不連続となることを見いだした。 (3)窒化ケイ素粒界相としての有効性の確認:少量の液相で焼結するガス圧焼結法を適用することにより、Lu系の高窒素含有液相を用いてLu_4Si_2O_7N_2相を粒界に持つ窒化ケイ素焼結体の合成に成功し、機械特性に優れる材料を得た。 (4)耐熱性の評価:Lu_4Si_2O_7N_2相を粒界に持つ窒化ケイ素焼結体の高温物性を調べた。通常の量の粒界相を持つ材料Aと1/4の量に低減させた材料Bについて、高温強度と引張クリープ特性を評価した。A材料は歪み速度が速い曲げ試験の条件では高温強度は高かったが、一定応力での引張クリープ条件では数十時間で破断した。一方、B材料は即時破断強度はA材料に劣るものの、引張応力条件下でのクリープ変形速度が遅く、1500℃の温度における137MPaの応力下で1000時間以上の長期に渡り、破断することはなかった。これはタービン用途の耐久条件をクリアーしており、セラミックスタービンへの適用が可能と判断された。 3年間の研究を終えるに当たり、1500℃の耐熱性を達成し、高窒素含有液相を用いて窒化ケイ素焼結体を造るというコンセプトが立証された。
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