本年度は、まず、2種の炭素繊維強化炭素複合材料ならびに2種のセラミック基複合材料を用いて、剪断強度の歪速度(荷重負荷速度)依存性について歪速度約10^<-5>/sから約10^3/sまでの広範な範囲にわたる測定を行なうと同時に一部亀裂の進展速度を計測した。その結果、材料によって歪速度依存性が大きく異なることが明らかとなった。例えば、炭素複合材料に限っても、直交積層材料では歪速度の増加とともに剪断強度は単調に増加するが、一方向材料では測定した歪速度の範囲では強度は一定であった。亀裂の平均進展速度は、歪速度の増加とともに増加する傾向が認められ、歪速度10^3/s近傍では1500m/sにも達することが分かった。この速度は、材料中の音速の数分の1にも達する速さである。また、亀裂は加速、定常、減速していることも明らかとなった。本測定中に歪速度の遅い領域のみではあるが、通常のCCDカメラによる観察では判別が難しい亀裂の発生に伴う歪変化をスペックル計測によって観察が可能なことを明らかにした。 前述の歪速度域よりも速い測度域においても、応力と歪を計測できるシステムを構築し、限定的な条件ではあるが歪速度10^5/s域での炭素繊維強化樹脂複合材料の応力と歪の計測に成功した。この領域に於いても繊維ならびに界面が応力と歪の発生に大きく影響していることを明らかにした。 さらに、炭素繊維強化炭素複合材料の曲げ疲労特性を取得した。取得した条件内では、炭素繊維強化炭素複合材料は疲労し難い材料である。前述の歪速度範囲内において亀裂の進展が歪速度によって変化すること、強度の変化と亀裂進展とは1対1に対応する現象ではないことが分かりはじめている。
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