本年度は、次の点を中心に検討した。(1)数種類の炭素繊維強化炭素複合材料(C/C複合材料)を試料として用いて、疲労回数10^7回までの系統的な曲げおよび剪断疲労試験を行った。その結果、曲げと剪断では疲労する条件あるいは疲労する試料が大きく異なること、曲げでは応力比が大きいほど、逆に剪断では小さいほど材料劣化が大きくなること、水中で疲労が加速される試料が存在することが分かった。 (2)エポキシ樹脂の硬化剤を選択することで特性の異なるエポキシ樹脂を作製して歪み速度の大きな衝撃試験を行い、樹脂の特性あるいは構造が損傷に与える影響を考察した。その結果、歪み速度(負荷速度)によっては、損傷を減じることができる硬化剤の種類と混合比を見いだした。しかし、ゲージで確認できる応力や歪みには大きな相違は認められないため、高負荷速度条件下での試料の局所的な挙動の相違が関係していると推察された。成果を衝撃波シンポジウムにおいて口頭発表した。 (3)前項と同一の樹脂を用いてモデル的なCFRPを作製し、衝撃試験時に試料内部、特に繊維とマトリックスとの界面での損傷挙動をin-situ高速撮影した。界面特性の違いがマトリックスと繊維との剥離挙動に大きな影響を与えていることを観察することに成功した。表面処理の有無で最終的な破壊状況が異なることは既に分かっていたが、その初期から破損の様相が異なることを明らかにした。 (4)シャルピー衝撃試験時の亀裂の進展挙動をより詳細に観察するために装置の改良を行った。その結果、項目(1)で検討したC/C複合材料の中に亀裂の進展挙動が疲労試験の前後で変化するものが存在することが分かった。
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