昨年度に引き続き、カーボンナノチューブ(CNT)や気相生長炭素繊維(VGCF)表面へのグラフト反応とその電気的性質について検討し、以下の成果が得られた。 1.ラジカルトラップ法を利用したCNTやVGCFの表面グラフト化 CNTやVGCFは強力なラジカル捕捉性を有することを利用し、マクロアゾ開始剤の熱分解で生成したポリマーラジカルをCNT表面で捕捉することにより、CNTやVGCF表面へ対応するポリマーがグラフトすることを見出した。この様な系では、非常に容易にポリマーグラフト化CNTの合成が可能になる。また、ラジカルトラップ法を利用したCNTやVGCF表面へのペルオキシ基の導入法を確立し、CNTやVGCF表面からの各種ビニルモノマーのグラフト重合に成功した。 2.ポリマーグラフト化CNTやVGCFのキャラクタリゼーション CNTやVGCF表面へグラフトしたビニルポリマーをアルカリ処理により表面から遊離させ、その分子量や化学構造の検討をGPC、NMR装置を用いて行った。さらに、ダブルショットパイロライザーとガスクロマトグラフ質量分析計を用いてCNTやVGCF表面グラフト鎖の構造を解析した。また、溶媒中への分散性や表面濡れ性との関係を明らかにした。 3.ポリマーグラフトCNTやVGCFからのCNT複合体の合成 上記で得られたポリマーグラフトCNTやVGCFは各種ポリマー中へナノオーダーレベルで均一分散するので、新規のナノ複合体を合成できることを見出した。また、CNTやVGCF表面グラフト鎖の化学構造や分子量がポリマーマトリックス中への分散性に及ぼす影響について追跡し、新規導電性ナノ複合体の合成法を確立した。 4.ナノ複合体の電気特性とセンシング機能 CNTやVGCFナノ複合体の電気抵抗値はグラフト鎖の良溶媒中で著しく増大し、空気中へ戻すと、初期抵抗値に復帰することを見出し、そのセンシング機構を解明した。
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