研究概要 |
本研究では,金属材料中の微視的な領域における水素の存在位置と存在量を同時に観察することのできる顕微水素イメージングシステムを用いて水素分布を定量的に観察するとともに,水素吸蔵合金中の水素の挙動を解明することにより水素吸蔵合金の水素化特性の向上を図ることを目的とした. 試料として,チタン基およびマグネシウム基水素吸蔵合金を取り上げ,これらの合金の水素化特性を調べた.チタン基水素吸蔵合金については,金属間化合物TiCr2の近傍組成の合金を作製し,この合金中の水素分布をラジオルミノグラフ法および銀デコレーション法により観察して水素挙動を調べた.微視的な領域における水素分布の定量的な測定から試料の微細組織や試料構成元素分布と水素濃度の関係を明らかにすることにより,3.5mass%もの水素吸蔵量を示すTi-Cr合金を開発した.また,水素濃度プロファイルを測定し,これを解析することにより,水素の拡散係数を決定した.これより,BCC相中の水素の拡散係数はLaves相中のそれよりも約一桁大きいことを明らかにした. マグネシウム基水素吸蔵合金については,Mg-Mg2Ni共晶合金を作製し,水素吸蔵放出特性を評価した.この合金の水素吸蔵量は熱処理により変化することを見出し,水素吸蔵速度はMg2Ni相の形状に依存することを明らかにした.この合金では,測定温度400℃において,6.3mass%もの水素吸蔵量が得られた.さらに,ハイブリダイゼーション法によるニッケルコーティング処理を施すことにより,純MgおよびMg-Ni共晶合金の両者とも水素化速度を増加させることに成功した.
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