安定化ジルコニア(YSZ)などの酸化物イオン導電性固体電解質を用いる固体酸化物燃料電池(SOFC)は、原理的に総合変換効率が最も高い。また、メタンなどの炭化水素系燃料を高度に精製することなく使用できる。しかし、現在開発中のものは約1000℃という高温運転のため、材料の劣化が避けられず材料選択も制限される。もし、800℃程度の低温作動が可能となれば、これらの問題も解決され実用化に拍車がかかる。 本研究は、炭化水素系燃料ガス用高性能アノードを開発し、低温作動SOFCの実現に貢献することを目的とする。本年度は、以下の研究成果を得た。 1.電子-イオン混合導電性サマリアドープセリア(CeO_2)_<0.8>(SmO_<1.5>)_<0.2> (SDC)微粒子の焼結多孔体上に微量のニッケル触媒を担持したアノードの微細構造と性能の関係を解析した。その結果、粒径約20nmのNi超微粒子がSDC表面に高分散されているため、従来のサーメット電極の約1/8以下のNi使用量で、有効反応面積が十分に確保できていることがわかった。 2.Ni高分散SDCアノードをYSZ電解質に取り付け、信頼性試験を行った。加湿水素燃料中、800℃、0.6A/cm^2で、1100時間以上安定に高性能運転できることがわかった。 3.上記の構造のセルに加湿メタンを燃料として供給し発電特性を調べた。メタンの完全な水蒸気改質に必要なS/C(水蒸気/炭素)比は2であるが、S/C=0.04〜1という低加湿条件でも発電が可能であった。マイクロガスクロにより排気ガス組成を調べたところ、放電生成物の水蒸気によってアノード表面で改質が進行し、反応に必要な水素がセル内部で生成していることがわかった。今後、水素生成量を増加させれば、高効率化できる可能性がある。
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